色々なことを話したんだ。
学校はダルくていつも寝てばっかりだとか部活に屑桐さんっていう人がいてその人がいちいちうるさいんだとかでも、やっぱり野球が好きだとか。そう、色々。
でもはいつも何も答えてくれねぇんだ。
俺、自分のこと話してばっかりで。
俺が何か質問してもは寂しそうに笑うだけ。
聞けなくなっちまうじゃねェか。そんな顔されると。
俺はもっとのこと知りてェのに。
でも、そんな悲しそうな顔、させたくないから。
「…眠ィ」
芭唐が大きくあくびをする。
眠いなら家で寝てればいいのに・がそう返すと芭唐はそれには何も答えずに毎日朝練あんだよ・と言ってまたあくびをした。
大変だねぇとはひとりごとのように呟いた。
「何?」
「何って…キス」
「そんなのわかってる」
が不機嫌そうな声を出す。
「何?ヤだった?」
「…何でそういうこと言うわけ」
「俺、多分のこと好きだわ」
思わず泣きそうになった。
だって、芭唐があまりにも真剣な顔だったから。
「そんな軽々しく」
「芭唐チャンプレイボーイらしいから」
「うっわ」
でも本気。今回は。芭唐が言った。
知ってたよ。でも気付かないフリした。ごめんね。ごめんね。
私もきっと芭唐のこと好きだから。
だから、言えない。
その後はいつも通りに海を眺めながら喋って、別れた。
がどこから来て、どこへ帰ってるのか、どこの学校へ通っているのか、いや、それどことか本当に高校生なのかどうかもわからない。なんとなく、同い年のような気がしただけで。実際は何歳なのか。俺、のこと何も知らねェ。
この前、の帰る後をこっそりついていこうと思ったけど、やめた。
知ってしまっては駄目なような気がした。なんとなく、なんだけど。ほんとに。
この、背中に手を伸ばさなかったらもう二度と会えないような気がした。
「ちょっと」
「好きだ」
「さっきも聞いた」
「好き」
「わかったから」
「…は?」
俺は帰ろうとするの背中に向かって駆け出し後ろから強く抱きしめてそう言った。
の身体は思った以上に脆くて俺が少し力を強めれば壊れてしまいそうだった。
は静かに首を振って俺の腕から出た。
そして俺と向き合うと寂しそうに笑った。
ホラ、またその顔だ。
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