休み時間になってもは自分の席に座ったままだった。
まだ気だるさが抜けきっていない。
ふあーと小さくあくびをした。
形だけ開かれた教科書とノート。
ノートはもちろん真っ白なままだ。
はその双方をパタンと閉じた。
そして自分のすぐ左側の窓に目をやる。
窓からはグラウンドが見える。
何か、幸せな夢を見たきがした。
あの男の人は誰?
「あー…恋がしたいなぁ」
がため息まじりにいうと自分のすぐ右隣で声がした。
「なにー、チャン恋してないのー?」
それからまもなく声の主は寄りかかるようにの左肩に手を回した。
「ばからー重いー」
はそう言って首を振るが芭唐は動こうとしない。
それどころかの机の上に置かれた紙パックのリプトンティーを見ると勝手に飲みはじめた。
「何コレ。俺はじめて飲んだ」
そう言って紙パックをまじまじと見る。
「キャラメルだよ。冬季限定」
が言うと芭唐は興味なさ気にへぇ、とだけ返した。
しかしは全く気にせずに「返せ」とだけ言って芭唐の手から紙パックをうばいとった。
「じゃあさー、」
そう言いながら芭唐はの前の席のイスに座って体ごとのほうに向ける。
は先程まで芭唐の体の重みに耐えていた左肩をぐるぐるまわした。
「何よ」
芭唐がじっとの目を覗き込む。
「俺と恋しちゃう?」
「…は?」
少しの沈黙の後にが言う。
「ハイハイ。かわいそうな女でごめんね」
そのの言い方は芭唐の言ったことをまるで本気にしていない様子がうかがえる。
「俺、本気なんだけど」
が驚いて芭唐のほうを見た。
視線が絡まる。
「バッカじゃないの」
はぷいと顔を逸らした。
「あらチャン照れちゃってーかわいー。あ、もしかしてもう芭唐クンにホレちゃった?」
からかうように芭唐が言う。
「バッカじゃないの!」
は今度はさっきよりきつめにそう言ってそれと同時に立ち上がった。
芭唐は教室を出て行くの背中を見つめながら満足気に笑った。
(2006.1.12 実はだいぶ前に書いたおはなしをちょっと変えただけ)
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