* parting *


















「あたし、明日引っ越すんだってさ」


いつもと同じ学校の帰り道。
芭唐が驚いたようにあたしの方を見た。


「だから、別れよっか」


普通の会話みたいに軽く。


「あぁ、そうだな」








こんなにも簡単に終わっちゃうもんなんだなって少し、虚しくも感じた。


「2人で通るこの道も今日で最後か」


そう思うと少し寂しく思えて。
芭唐も「そうだな」って小さく言って繋いだ手は離さないまま。
いつもと同じ別れ道で。


「今日だけ特別っていうのは嫌なの。いつもと同じようにしよう?」
そう言って芭唐もうなずいて
いつもと同じこの場所でいつもと同じお別れのキス。
いつもなら「また明日ね」って笑って手を振る。
だけど今日は…


「バイバイ」
「じゃあな、


そう言って別れた。
始めて「バイバイ」って言って別れた。
芭唐はいつものように「」って言わないであたしの事、苗字で呼んだ。



チク。心にトゲが刺さる。
もう…会えないのかもしれない。
あたしはだんだん小さくなっていく芭唐の背中を見送りながらそう思った。











部屋にはもうほとんど何もない。
終わっちゃったんだなって今更
バイバイの重みを感じて。
蘇ってくるのは楽しい思い出ばかり。
あたしはどうしようもない虚しい気持ちになってその場に座り込んだ。
何もない空白の部屋がいっそうその気持ちを高める。
なんだか急に弱々しい気持ちになった。










ふとケータイの着信音が鳴った。
聞き慣れたメロディ。
サブディスプレイに表示された愛しい人の名前。


「もしもし…?」
少し緊張しながらもボタンを押して。
?あのさ、明日見送りに行ってもいい?」
驚いた…けど純粋に嬉しかった。


彼はもうあたしの事をとは呼ばない。


「いいよ」


この時ばかりは「じゃあまた明日」って電話を切って。
理屈なんか抜きに明日もまた会えるんだって事が嬉しかった。










朝の10時。
住み慣れた家にも、小さい頃よく遊んだ公園にもお別れをした。
何気なく歩いていた道も今日で終わり。
そう思うと道端に生えている雑草まで愛しく思えてきて。
なんだか泣きそうになりながらもあたしは新幹線の駅へと向かう。




…」
約束の場所にはもう既に芭唐の姿があった。
今まで1度もあたしより先に来たことなんてなかったクセに。




「おはよう」


そう言ってそっと芭唐に近づいた。
行こうかって2人、手は繋がずにホームまで歩く。






1ヶ月後、あなたは何してる?






「まもなく6番線に電車がまいります」


あたしたちを引き裂くアナウンスが響き渡った。



「これからも野球頑張ってね、芭唐。あと…幸せに…なってね」


も幸せになれよ。絶対」




そう言ってあたし達はお別れのキスをした。




「バイバイ芭唐」
「あぁ。バイバイ




列車のドアが閉まった。
芭唐はやっぱりあたしを名前では呼んでくれなかった。
あたしは最後まで涙を堪えるのが精一杯だった。









嫌いになったわけじゃない。
今でも芭唐を好きだけど、言えなかった。
そうそう会えもしないのに芭唐を縛り付けるわけにはいかないんだ。
お互いに好きだなんて言わなかったけど
最後のキスには充分なほどに思いが込められていた。
これからはお互い違う道を歩くことになる。
だから…幸せになってね。芭唐。









あたしたちには「遠距離」という壁は大き過ぎたんだ。
「バイバイ」の重みを身に染みて感じ
あたしは列車の中で1人涙を流した。










あなたは今何をしてる?











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