ってさ男…嫌いだろ?」


















* アンバランス *
















は驚いたようにこっちを振り返った。


俺は自分の机に腰掛けていつものようにガムを噛んでいた。
はドアを開けようとしていた手を止めて困ったように笑う。


「意外ね。御柳にそんな事言われるなんて」


放課後の教室。


と2人で話をしたのはこれが最初かもしれない。


「なんで急に?」


の目は青い。
でもそれは太陽の光りが反射して輝いてる真夏の海のような色ではなくて
どっちかって言うと寒い真冬の海みたいな冷たい色。
別にカラコン入れてるわけでも親が外国人なわけでもないみたいだけど。


「どっちかって言うと男好きって言われるほうが多いかなって思ったんだけど?」
そう言っては笑ったけど
ホラ、な。


「目が笑ってねぇんだよ」


冷たい海の色はそのまま。


「そういうの…なんとなくわかっちまうんだよな」
俺はそう付け足した。


「御柳の言う通りよ。男は嫌い。疲れるだけ」


吸い込まれそうになるんだ。
その深い海底に。


俺はから目を逸らした。




は男と仲が悪いわけじゃない。
それでもやっぱりわかっちまうのは…


「いつもお前を見てたからだろうな」


俺はガタンと音を立てての方へと歩み寄った。
そしての細い手首をグッと掴む。
が…逃げないように。


「何?もう充分でしょ?」


は動じる事なくその冷たい目線を俺に向ける。


「あたしが男を嫌うのは疲れるからって言ったでしょ?…君も」


頼むからそんな目で俺を見るな。
なんだか悔しくて体が先に動いてしまった。


には敵わない。
でも力じゃ俺が勝つだろ?



俺はを掴んでいた手をグッと引き寄せた。



に余計嫌われる事ぐらいはわかってたけど。
嫌な奴でもいい。
君の記憶に少しでも俺が残ってくれればそれでいいから。


俺はと重なっていた唇を離した。


不意打ちだったのでは少し苦しそうに息をした。
それでもは何事もなかったような涼しい顔で俺を見上げる。


「…幼稚ね」


そしていつもの表情で笑った。




だからそれが笑えてねぇって言ってんだよ。
いつか俺が本当に笑えるようにしてやっから。




「…覚悟しとけよ」




俺は小さくなっていくの背中に向かって小さく呟いた。







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