沖田の刀が土方を捕らえた。
沖田の眼はあのときの眼だった。
人を殺すときの。












そう、俺が総悟をこうさせたんだ。

























イデンティティ・モーション

























「どうした?俺はまだ動けるぜ?」



土方が挑発的に言った。
月の光が屈折してその研ぎ澄まされた刀には夜の屯所が映し出されていた。
沖田の刀が動くことはなかった。
やっと刀が動いたかと思うとそれはスルリと沖田の腰に戻された。


「…何のつもりだよテメェ」


土方が低い声で問うた。
不機嫌な表情の土方と目があうと沖田は少し淋しそうに笑った。


「俺にもわかりやせん」


沖田は力なく言うと土方に背を向けた。


「オィ総悟!」


土方の声に沖田が振り返ることはなかった。
チッ…と小さく舌打ちをして土方もやっと自分の刀を鞘にもどした。





沖田にはわかっていた。
あのとき手が動かなかったのは脳裏にの悲しそうな表情が浮かんだからだ。
を悲しませたくなかった。
矛盾している。
そんなことはわかっている。
でもどうしようもなかった。
人の殺しかたは知っていてもこの焼け付くような痛みをどう対処したらいいのかは知らなかった。
ただ胸が締め付けられるように痛かった。


「どうしたらアンタを笑わせてやることができるんでしょうかねェ…さっぱりでさァ」


沖田がそう呟いて淋しそうに笑ったのを月だけがみていた。














総悟にを任せてもいいと本気で思った。
長い付き合いだ。アイツのいい所もいっぱい知ってる。
もちろんアイツがかなりおっかねェ人物であることも俺が一番知ってるだろう。
でも、だからこそあの時剣を抜いた。
生半可な気持ちじゃねェ。
総悟の剣が俺を殺すことができることだって知ってた。
そうでなきゃ意味がねェんだ。剣を抜いた意味が。
朝になったら愛しいあのひとに会いに行こう。
そして全てを伝えよう。
お前がどんな表情をしようとも。




俺は真選組副長だから。


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