妙な緊張感が流れていた。
は土方の瞳をじっと見つめていた。
土方が黒い隊服のポケットから煙草の箱を取り出しその中の1本を咥えるとライターで火をつける。
「土方さん」
「駄目だ」
土方はゆっくり煙を吐き出した。
はその言葉を聞いて力を込めて言った。
「…っ何でなんですか!!私だって立派な忍です!!充分に戦える!!」
声が副長室に響きわたる。
土方はふぅと息を吐き手に持っているそれを灰皿へと押し付けた。
「俺ァそういうことを言ってんじゃねェよ。、第一お前がいなくなったら誰が隊士の飯作んだよ。俺ァ総悟の作った飯なんて食いたくねェよ」
アイツぁ俺の分だけとんでもねェことしやがるからな。まぁもとからとんでもねェ野郎だがよ。
土方がそう付け加えた。
私が留守にしたときにそういうことがあったのだろうか。
はそう思った。
土方のいう沖田の姿なら容易く想像することができる。
「…とにかく駄目なモンは駄目だ。お前をそんな危険な目にあわせらんねェよ」
ぷかぷか。白い煙が上へと昇る。
「私の本職は忍です」
「聞き取りは山崎に任せてある」
土方が間髪をいれずに言った。
「私はそれ以上の効果を収めることができます」
ほォ。土方がつぶやいた。えらい自信だな。
「奴はもうすでに江戸中に罠を張り巡らせている。ここ最近連続して起こる放火も奴のせいでしょう」
「フン、よく調べたもんだ。感心するぜ」
「調べなくてもわかります」
土方はわけがわからないとでもいったようにを見た。
は依然として続ける。
「高杉晋助は私を狙っています」
「どういうことだ」
土方の口調が明らかに強くなった。
すでに短くなってしまった煙草を灰皿にギュっと押し付ける。
「彼は私に会いたがっています。しかし、それを逆手に取れば確かな情報を聞き出すことができます」
なぜ高杉がに会いたがっているのか。土方は少しも疑問に思わなかった。あの高杉のことだ。いつを取り返しにくるかわかんねェ。寧ろそう感じていた。
「なおさら駄目だ。危険すぎる」
ガタっと音を立てて土方は立ち上がった。
「土方さん」
その背中にが言った。
「あ?」
土方が振りかえる。
「時間がありません」
土方はこうなることを予期していた。でもを手放したくないと思った。
土方はかすかに笑うと頷いた。
「無茶はするなよ。危ねェと思ったらすぐに戻ってこい」
「ありがとうございます」
部屋を出て行く土方には頭を下げた。
、やっぱオメェはたいした忍だよ。土方がひとりつぶやいた。



(2004.12.17 続くのかな…)

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