イビー






















いっそ過去を捨てることが出来たらいいのに
蓋を開ければあの頃のまま
思い出にすることもできなくて
いつまでも過去をひきずったまま今を生きている俺は惨めだ。



俺は自分の手元に目線を移す。
手の中にあるソレがチャリンと音を立てた。
何度も捨てようとしてるのに
捨て切れないのは何故だろう?
拳をぐっと握る。
離せない、離せない。



ドアが開く音がした。


「やっぱりここにいた」


俺は入って来た人物がだと確認するともう一度空を見上げる。


「まだソレ持っててくれてたんだね」


「あぁ」


手の中でチャリンと音がする。


「無涯ならもう捨ててるかなって思った」


ガシャン。がフェンスにもたれかかる。


「御門も持ってくれてるかなぁ・・・」




そう言って空を見上げて。
あぁお前には青空が似合っている。
心地良い風がの髪を揺らす。


お前は綺麗だ。
きっと俺のような奴の傍にいるよりもアイツの傍にいた方がいいだろう?
お前の口からアイツの名前が出ただけでこんなにも苦しいなんて。
俺はもう1度手の中にあるソレ、
中学の時にが友達の印だと言ってくれたシルバーのネックレスを握り締める。
と、牛尾と、俺と。
友達の印なんだと。
あぁ俺はまだ過去を捨てきれずにいる。





「なんでお前は十二支に行かなかった?」


俺の質問には首をかしげる。


「なんで?」


「牛尾がいるからだろう」




苦しい 苦しい。
馬鹿だな俺は。




は少し黙った。
返事が聞きたいような聞きたくないようなもどかしい気持ち。
頭痛がする。
この空の青ささえも俺には似合わない。




「あたしは、華武に行きたいから華武に来たの」


そう、しっかりと。
今なら言ってもいいんだろうか?
ずっと堪えていたこの思いを。
傷つけて、傷つけて突き放しても
それでもお前は俺の傍にいてくれた。
俺は自分が傷つくのが怖かっただけかもしれないな。



・・・俺はいまでも友達のままか?」



は目を丸くしている。


「それってどういう・・・」


が最後まで言い切るのを遮って。



「お前が好きだ」



風が・・やんだような気がした。
心が軽い。
想いが伝えられただけで充分だ。
あぁ、できるならが何も言う前にこの場所を去りたい気持ちだ。
ゴメンだなんて言葉は聞きたくないから。



「あたしも無涯の事が好きだよ?」



耳に届いた言葉は俺の想像していたものとは遥かに違って
でもそれは俺が望んでいた言葉であって。


あぁ、こんなにも簡単な事だったんだな。
俺はが好きでも俺の事を好きでいてくれた。
俺は充分幸せじゃないか。
俺はを強く抱きしめた。
守りたい何かがある。
過去は捨てなくていい。
過去を思い出にする事も1つの勇気と呼ぶんだろう。
もう1度お揃いのネックレスを買おう。
今度は友情じゃなくて愛の証。









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