「えっ、ウソ?!」


思わず大きな声を出してしまい慌てて声のトーンを落とした。
「ほんと。だって本人に聞いたんだもん」
山崎が神妙な顔つきで言った。
あたしはガクリとうなだれた。
「ショックー…あたし沖田のこと好きだったのに」
途端に山崎が酷く驚いた表情をした。
「…何よその顔」
あたしが不満をこめて言うと山崎は慌てて首を振った。
「えっ…いや…ゴメン!が沖田のこと好きだって知らなかったから…」
その言葉を聞いてあたしは再びハァと溜息がついた。
「いやどうせわかることだし別にいいよ」
まぁ沖田ぐらいの人なら彼女がいてもおかしくないしなぁ。
ふと悲しくなってあたしはもういちど溜息をついた。
山崎はバツの悪そうな顔をしていた。







あたしは振り向かなかった。
声の主はあたしが間違えるはずのない、アイツのものだったから。
「無視するこたァないだろィ」
後ろから肩をグッと掴まれて無理矢理そちらのほうを向かされた。
誰もいない廊下に西日がさしている。
全てのものがあかく、染まっていた。
「…何泣いてるんでさァ」
あたしは沖田の顔を見ずに、いや、見ることができずにセーターの袖で涙をぐっと拭った。
「泣いてなんかない…!」
どうせ、あかく染まっているのなら、あたしの目の赤いのなんて見えなくていいと思った。
でも沖田の顔を見るとそれをこらえることができなかった。
あたしの目から溢れた雫があかいひかりに反射してキラリ、ひかった。
「嘘」
その言葉と同時にふわっといい香りがした。
あたたかい。あたしは沖田の腕の中にいた。
「何すんの…!彼女に怒られるよ…」
でもあたしはそこを動くことができなかった。
それは沖田があたしのことを強く抱きしめていたからかもしれないけど
きっとそれ以上にあたしはこのあたたかい彼の腕から逃れたくないと思ってしまったのだ。
あたしってば何て奴だ。
「山崎のことならバッチリしめておきましたぜィ」
「え…?」
はじめてあたしは沖田の顔を見た。
「おおかた山崎の言ったつまんねぇこと間に受けたんだろィ?」
沖田の指先があたしの頬にふれた。そしてその指は優しく涙をすくう。
「え…だって沖田彼女いるって…!」
「だからそれでさァ。ほんとは俺が今日に告白するつもりだったんでさァ」
沖田が困ったように笑った。
「…好きな人泣かせちまうぐらいなら見栄はるんじゃなかった」
あたしはつらつらと喋る沖田の言葉を理解することができなかった。
「…好きですぜ」
この言葉が聞こえたとき、もう理屈なんていらない、と思った。
が正真正銘俺の彼女でさァ」
やっぱり涙は止まらなかった。
この腕に包まれるのはあたしだけでいい。
夕日は燃えるようなあかできれいだと思った。
目の前にいるこのひとがとてつもなく愛しいんだ。





(2004.10.30 なんか雰囲気だけでも伝わったら充分なんです)
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