「帥仙ってつくづく馬鹿よね」


あぁ。
お前には今1番会いたくなかったんだけどな。










この場所から












「こんな重いモン手首に付けちゃって」
そう言っては俺が先ほどまで手首付けていた重りを左右に揺らす。
「帥仙は変なトコばっかり意地張っちゃってさぁ…オマケに3軍落ちとは世話ないよね〜」
そう言っては意地悪く笑う。
「黙れ」
俺はそれ以上何も聞きたくなくてを追い払うように冷たく言った。
「八つ当たり…ってか」
が呆れたように言う。
「黙れ」
俺はもう1度言った。
「もういいだろ…お前はまだマネージャーの仕事が残ってるはずだ。
俺のことはもういいからさっさとグラウンドに戻れ」
そう言って俺はを背にして歩き出そうとした。
これ以上この場所にいたくない。
自分が惨めであることは充分わかってるから。
だからこれ以上は何も言わないでいてほしい。


「嫌だね」


俺はに背を向けたまま立ち止まった。
今、情けない顔をしているだろう自分を見てほしくなかったから。
「帥仙が心配だから言ってんのに」
後ろからの声がする。
「…それで?余計なお世話だな」
頼むからもう今は何も言わないでくれ。
口を開けば、出てくるのはを突き放すような冷たい言葉ばっかりだから。
が呆れたように笑ったのがわかった。
コイツには何1つ隠し切れないんだな。
全部、お見通しだ。


「…応援してる」
「あぁ」
「だから頑張って」
「あぁ」


俺はとは違う方向へとそのまま歩き出した。
少し進むと俺はピタっと足を止めた。

「かならず1軍になってやるから」
「うん」
少し離れた所からの声がした。

「信じてる」

の呟きにも近いような掠れた声は確かに俺の耳に届いた。
俺は結局を振り返ることはせずにそのまま歩いて行った。
の表情を伺ったわけではないけれど
は今、笑っているような気がした。
なんとなく…だけど。






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