「山崎くん」

私はとっさに彼を呼ぶのをやめた。
彼は少し暗い部屋にある窓から入ってくる太陽の光が当たるところにいた。
しかし彼は壁にもたれかかってこっくりこっくりと船を漕いでいた。
おそらく副長に何かの書類を探してこいとでも言われたのだろう。
私は部屋を見渡した。
狭い部屋の中には床から天井まで…といっては少し大袈裟かもしれないが数え切れないぐらいの引き出しがあってその中には数多くの書類が入っているのを私は知っている。
だからこそこの部屋に来たのだが。
私は彼を起こそうかどうか一旦躊躇した。
何枚もの紙切れが彼を取り囲んでいた。
このままだと副長に怒られるんじゃないかな。そう思ったのだけれどもなんだか起こしてしまうのもまた気がひけた。
少し考えたあと、とりあえず自分の書類を先に見つけようという結論にたどり着いた。
目を凝らしてラベルと睨み合う。あ、あった。
しかしその引き出しは私にとってとても不都合な位置にあった。
精一杯背伸びしても届かないことがわかると私は小さく溜息をついた。
ひょい。突然私の後ろから手が伸びた。
その手は私が格闘していた引き出しをすんなりと開けてその中にあった紙の束を私に渡した。
「あ、ありがとう」
突然のことにすっかり驚いた私はぎこちなく彼に言った。
彼はどういたしまして、とニッコリ笑ったあと急に何かを思い出したように青ざめた。
さん今何時かわかる?」
「3時12分」
私が腕時計を見ながら言うと彼は急いで床にちらばった紙切れたちを集めた。
「また副長に怒られちゃうよ」
そう言って彼は苦笑いをした。
「じゃお先に!」
彼は慌てて部屋を出て行った。
私は彼がいなくなってしまった狭い部屋で彼がとってくれた書類に目を通した。
それが私の探していたものであることを確認すると私もそっと部屋を出た。
副長の部屋のドアをノックしようとすると中から声が聞こえた。
「テメェは書類探すのにいったい何時間かけてんだァァァァ!」
失礼しますと言って部屋の中に入ると怒られているのは案の定山崎くんだった。
パチリ。目があうと彼はほらね、言ったとおりでしょ?、とでも言いたげな表情だった。
私はニッコリ笑ってみせた。


(2004.11.07 え、これ夢小説なんですか?)


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