生きるということ 死ぬということ
「土方さん」
「何だ」
俺が振り向くと俺を呼んだ張本人はまるで俺を呼んだことを忘れたかのように
いつもの何考えてんだかわかんねぇ顔でこっちをじっと見ていた。
「何なんだよ」
イライラしてもう一度声をかけると総悟はやっと口を開いた。
「社会の窓、開いてますぜ」
「なっ」
俺が慌ててそこへ手をやると「嘘ですぜ」とあっけらかんと返しやがった。
「死にてェのか」
俺が剣を抜きあぐらを掻いて座っている総悟の首元に近づけても俺の目の前にいるコイツは表情ひとつ変えやがらねェ。
俺は溜息をひとつ吐いて剣を元の位置に戻す。
「俺は土方さんに殺されるなら本望でさァ」
俺は伏せていた目を総悟の澄んだ目へと移した。
「馬鹿か」
ハッと笑うと俺は慣れた手つきで煙草に火をつけると窓際の壁に身を預けた。
「お前はそんな死に方で納得できるような奴じゃねェだろ」
俺がそう言うと総悟は少し首をかしげて「そうですかねェ」と呟いた。
「でも俺は土方さんの最期を見届けるまで死ねませんぜ」
「…えらく矛盾してるな」
俺は呆れて煙をフゥと吐いた。
煙はさっき俺が空けた窓の外へと旅立っていく。
「土方さんがこの世を去る時、最後に見たものが俺であるように…ね」
「他の人に殺されるのも何だしそれなら俺がこの手で殺めてやろうじゃないですかィ」
そう言って総悟は挑戦するように口元を引き上げた。
「今のお前じゃ到底無理だな。もっと強くなってから挑め」
まだ少し冷たい風が俺の髪を撫でた。