■あなたってひとは(山→沖) 「また、怪我したんですか」 「薄皮1枚剥がれただけだろィ。たいしたことありやせんぜ」 「僕も、こんな風に帰ってきたみんなの手当てをするだけじゃなくて、 早く自分自身が戦場に行けるような実力をつけたいです」 「…山崎、馬鹿な考えは捨てたほうがいいですぜ。あそこはまるで地獄でさァ。 自分が「人」であることを忘れちまう」 「じゃあ沖田さんはっ、沖田さんは人を殺しても何とも思わないのですか…?」 「手当て、どーもね」 沖田はそれには何も答えず医務室を出て行った。 |
■強がりな(山→沖×土) 「副長!土方副長!駄目です!ねぇ!」 天気は生憎雨だった。 傘もささずに走る。 それを必死に止める男がいた。 「沖田さんは…沖田さんはあなたが来ることを望んでいません!」 山崎がとても言いにくそうに、それでもハッキリとした通る声で言った。 そうでもなければ雨の音にかき消されてた。 必死だったのだ。 山崎も、土方も、両方とも。 「お願いです副長…!」 山崎の喉の奥から搾り出されたような声が雨の中に虚しく響いた。 脳裏に浮かぶのはあの人の寂しそうな笑顔。 (みんなにはただの風邪だって言っといてくだせェ) (…でも…そんな…!) (大丈夫。明日からはいつも通り元気に振る舞いまさァ) そう言って寂しそうに笑うあの人の笑顔。 雨はまだ止むことを知らない。 |
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